人見知りの自分が、自分から利用者様に声掛けができるように成長できた

本郷佳奈英
私が中学生のころ、母が介護の仕事を始めました。母が仕事から帰ってきて利用者であるおばあさんの話などを楽しそうにするのを聞き、「いいなあ、いつか私もこの仕事をやりたいなあ」という想いを抱き始めました。母は常々、介護の仕事を「天職」と私に言っていました。初めは映像関係の仕事に就きたくて上京しましたが、結局、ホームヘルパーの資格を取得し、私も介護の世界で働くことになりました。この仕事は利用者様とのコミュニケーションがとても大切なので、人見知りで、コミュニケーションに自信のない私にとっては大きな不安がありました。でも、実際に仕事を始めると、先輩たちが優しく指導して下さるので、孤独感も感じることなく前向きに働くことができました。そして、高齢者である利用者様はとても気さくな方が多いので、自分から話しかけて下さり、人見知りの私はとても助かりました。しかし、いつまでも気さくな利用者様に甘えているばかりではいけないと思い、自分からお声掛けできるように頑張りました。生来の人見知りは変わりませんが、職業人としての自覚を持つことができるようになったと思います。そして、どんな些細なことでも、例えば「素敵な洋服を着てらっしゃいますね」と声をお掛けすると、嬉しそうにされるので、やはり気づきを意識して、ご利用者の気持ちがプラスになる言葉を掛けることが大事だと思うようになりました。

心の気遣いをしっかりしたデリケートな仕事の後の利用者様の「ありがとう」で役立ちを実感

それからの私は、利用者さまが笑顔で楽しく過ごしてもらうために、どんどんお声掛けをし、あいさつひとつで笑顔になって頂けるようにしたいと思っています。また、利用者さま一人一人に合った対応を心掛けています。例えば、お話をされない方や寝たきりのご利用者さまのおむつ交換の話ですが、おむつ交換をされる前は誰しも心地よくない状態です。私たちはそれを拭き、きれいにすることが仕事です。しかし、きれいにするだけでなく、丁寧に拭きます。さらに、利用者さまの恥ずかしい気持ちを少しでも少なくするためには、丁寧さに加えて、スピーディーにしなければなりません。そして、適切なお声がけをし、話しながら、時に「すぐ終わりますからね。」と安心して頂けるような言葉を掛けます。こういうデリケートな仕事ほど、神経を集中して、心の気遣いをしっかりしていきたいと思います。こうして言ってもらえた利用者さまの「ありがとう」ほど嬉しいものはありません。自分が役に立ててよかったと思う瞬間です。この仕事は私をどんどん元気にしてくれます。介助が少ない利用者さまからは、よくお話を聴かせていただきます。利用者さまはご自分の昔話をすることで活気づかれます。戦争中の話や私が生まれる前の昔話などが多く、今の時代では考えられない、映画やドラマでしか見たことがない実体験の生活シーンにいつも驚きを隠せませんが、こういう話を聴くことができるのもこの仕事の楽しみの一つです。

利用者様にとって何が必要かを考えられる「天職」と言えるような介護職を目指したい

仕事はスムーズに進むということばかりではありません。日々、自分の課題に遭遇します。そんな時、私はいつも先輩に相談します。これまで一番印象に残っているのは、不穏で落ち着かない認知症の利用者さまに対してどのようにお声掛けすればいいのか悩んでいた時のことです。私の先輩は、「本郷さんは、利用者様にどのようなことが必要だと思う?、どのようにしてあげたいと思う?」と問われ、私は「少しでも安心してもらいたい」と答えました。そうするとその先輩は「それなら、安心できるウソも必要」と教えてくれました。例えば、自宅に帰りたい利用者さまに対して、ご家族が面会に来られることがないとしても、「もうすぐ来られるから、一緒に待っていましょう」などと声をかけます。実際にはウソをつくというよりは、励まして安心させてあげようということなんですが、真正面に物事を捉えるだけでなく、利用者さまに必要なこと、してあげたいことといった観点で学ぶことができました。私の職場では、先輩たちが一つ一つ丁寧に教えてくれるので、新人や経験の浅いスタッフも働きやすい職場だと思います。今後は、嚥下機能の落ちた利用者さまや認知症の利用者さまへの対応に関してもっと勉強をしていきたいと思っています。いつか、母のようにこの仕事を「天職」と言えるような介護職を目指したいと思います。